もり内科クリニック
漢方専門外来

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風邪治療に抗生物質は必要ない
NO MORE ANTIBIOTICS FOR COLD

米国内科学会・内科専門医学会方針転換


上記学会は、薬剤耐性菌などの出現を監視している米疾病対策センター(CDC)などと共同で検討を重 ね、「風邪の大部分は抗生物質の使用は必要ない」との結論に達 したとしている。同学会では大部分の風邪はウィルスの感染で起きるため、細菌(バクテリア)を殺す抗生物質は効果がないとし「風邪のほとんどは安静にしていれば回復する」と呼びかけている。なお、65歳以上の高齢者・糖尿病・心臓病・肺疾患のある患 者は対象外としている。会長のサンドラ・アダムソン博士は「抗生物質耐性菌の脅威がますます広がることを懸念している。アメリカの年間処方抗 菌薬の75%は上気道感染症が対象であるが、そのほとんどが必要ないものである」と述べている。また、ビンセンザ・スノウ博士は「薬を飲めば 症状がすぐにおさまるという期待は捨てた方がよい。風邪は通常2週間は持続するものだ」と付け加えている。


院長から


当ホームページの最初に掲載している「風邪(ウィルス感染症)に対する漢方治療の考え方」を見て頂ければ、ウィルスに効果のない抗生物質の 投与は必要ないという考えは当然のことであることを理解して頂けると思います。必要ないどころか、かえって抗生物質の効かない細菌の増加に手 を貸しているだけではなく、効果のない薬に対し費用を負担しているのも、抗生物質耐性菌で苦しむのも、副作用で苦しむのもあなた方、患者さん なのです。必要のない抗生物質でだれが得をし、だれが被害を被っているのか、もう一度考えてみましょう。抗生物質は必要な場合にのみ(例えば マイコプラズマ・クラミジアなどに感染した場合)必要最小限を使用するということを心がけるべきです。また、現代医学では風邪に効く薬はない と上記の先生方は言っているのですが、それでは患者さんがかわいそうです。風邪に対しては「免疫力を高めて治療する」という漢方医学の考え方 が威力を発揮します。

 効果のない薬で「薬害」という健康被害にあわないよう、「風邪初期症状に対する漢方薬早期服用の効果」を併せて見ていただき、「効かない薬は飲まない」「自分にあった薬を服用する」という習慣を身 に付けることをお勧めします。



当院に かかっている患者さん100名を対象としたアンケート

風邪初期症状に対する漢方薬早期服用の効果 感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)(2012年版)
≪ 風邪治療に抗生物質は必要ない≫3/21付・読売新聞 4/19付・メディカル・トリビューン)感 染性胃腸炎(嘔吐下痢症)

表 1 漢方薬早期服用の効果

症状改善までの服用回数 男性
女性

一服 26 65 91(91%)
二服以 上 4 5 9(9%)
30 70 100(100%)

表 1は漢方薬早期服用の効果を示しています。90%以上の方が漢方薬一服でひどい風邪にならずにすんで います。風邪の症状を示した人が、すべて本格的な風邪に発展するわけではありませんが、自分に合った漢方薬を服用すれば、一服で効く、ということです。自分に合った風邪薬を見つけるということが大切なことを理解して下さい。

表 2 漢方薬を早期服用せず市販の風邪薬または西洋薬での効果

治癒するまでの治癒日数
男性
女性

1〜2 日 19 25(25%)
3〜4 日 15 37 52(52%)
5日以 上 9 14 23(23%)
30 70 100(100%)

表 2は今まで自分に合った漢方薬を飲まず、市販の風邪薬を飲んだり、医療機関にかかったりしていた時の 治療日数です。3〜4日の方が一番多いのですが、漢方薬一服で症状が改善する効果に比べれば、その違いがはっきりしています。その間、会社や 学校を休んだりすることも多いはずです。中には、風邪で有給休暇のほとんどを使い果したりしていた人もいます。しかし、一番大切なことは、市 販の風邪薬であれ病院でもらっていた風邪薬であれ、効果を実感して服用していた人がほとんどいなかったということです。「効果のない薬は飲ま ない!」という習慣を身に付けて下さい。

表 3 風邪の初期症状に用いた薬方

漢方 男性 女性
麻黄附 子細辛湯 11 31 42
桂枝湯 7 19 26
小青竜 湯 4 8 12
柴胡桂 枝湯 4 5 9
葛根湯 3 1 4
香蘇散 0 3 3
桂 麻各半湯 0 2 2
麻黄湯 1 0 1
甘草乾 姜湯 0 1 1
30 70 100

表 3は風邪の早期に服用している漢方薬を示しています。これを見ますと【風邪には漢方、葛根湯】などの 宣伝がいかにひどいものであるかを示しています。もちろん、葛根湯を飲んで効果のある人がいるのは事実ですが、非常に少ない、ということで す。実際、当院にかかる前に、風邪を引いた時に葛根湯を飲んでいた方もたくさんいましたが、ほとんどの人は効果がなかったと訴えています。こ れからは宣伝に惑わされず、自分の身体に合った漢方薬を 見つけ ましょう。

表 4 漢方エキス剤一包の費用

漢方エキス剤 費用(円)
麻黄附 子細辛湯 ツムラ 62
桂枝湯 ツムラ 22
小青竜 湯 ツムラ 55
柴胡桂 枝湯 ツムラ 83
葛根湯 ツムラ 28
香蘇散 ツムラ 23
桂麻各 半湯 東洋薬 行 21
麻黄湯 ツムラ 25

*1999 年9月時点

表 5 市販風邪薬の一日当たりの費用

市販風邪薬 費用(円)
ベンザブロック 460
コンタック総合感冒薬  450
新ルルゴールド 450
パブロンゴールド 400
新ジキニン 390
新ルル 250
カネボウ葛根湯 400
カネボウ柴胡桂枝湯 530
カネボウ銀翹散 630

*1999 年9月時点

表 4と表5は薬の費用を示したものです。表4は一包の費用で、表5は一日当たりの費用です。漢方薬一服 で治療できれば、どれ程安い費用ですむか、ということです。市販の風邪薬で効果がなく、さらに医療機関で治療すれば、もっと多くの費用がかか るわけです。当院では、患者さんが自分に合った漢方薬を 見つ け、安い費用で早く治すよう、力をそそいでいます。

もり内科クリニック 院長  盛 克己


感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)
INFECTUOUS GASTROENTERITIS


原因:主としてノロウイルス・ロタウイルス

ウイルスの感染について

感染性胃腸炎の原因ウイルスのうち、ノロウイルスは主に海の牡蛎などの二枚貝に生存し、ロタウイルスは主に動物の腸の中に生存しています。こ れらのウイルスが付着した食べ物などから感染します。ウイルスは、口・胃・小腸・大腸などの消化管の粘膜細胞で増殖します。一般の風邪のウイ ルスや、細菌は胃酸で死滅しますが、ノロ・ロタは胃酸で死滅することなくかえって胃粘膜でも増殖します。さらに、ノロ・ロタは増殖力が強く、 10匹前後の少ない数でも病気になることが有ります。感染しても、免疫力の強い人は病気になりません。増殖したウイルスは嘔吐や下痢などによ り排出されます。勿論、ウイルスは嘔吐物や大便には多く含まれていますが、一部は飛まつとなって空気中を飛び回り、感染を繰り返します。ノ ロ・ロタのウイルスが発見される前は、感冒性胃腸炎といわれたように、感染性胃腸炎は「風邪=かぜ」の一種でありました。ただ、ノロ・ロタは 感染力は強いのですが、病原性は低いので(漢方医学では、「中風=ちゅうふう=命にかかわらない病気」に分類)、重症化した場合の対処法をわ きまえていれば(点滴など)、命にかかわることはありません。尚、現在の西洋薬には有効な薬は有りませんが、漢方医学では、すでに約2000 年前に『傷寒論』という本の中に、「かく乱病=急性嘔吐・下痢症」が書かれていて、その対処法(刻々と変化する症状と、対応する漢方薬)が示 されています。当院では、症状に応じた漢方薬を処方し、できるだけ早く健康な状態に回復するよう対処しています。

同じような嘔吐・下痢症の病気である「コレラ」「0−157」など、細菌性で毒性の強い場合(漢方医学では「傷寒=しょうかん=命にかかわる 病気」に分類)は、命にかかわりますので、ウイルス性の感染性胃腸炎とは区別して対処しなければなりません。現在は、救急医学による、隔離な どの処置が必要となっていますので、漢方医学での治療は行いません。


症状と経過

ウイルスの進行に伴って、頭痛・鼻水・のどのイガイガ(上気道)⇒吐き気・嘔吐・胃痛(胃)⇒腹痛・腹満・下痢(小腸・大腸)と進行します。 嘔吐や下痢がひどく、脱水状態になってぐったりした場合は点滴治療が必要です。しかし、嘔吐や下痢によってウイルスが身体から排出されれば、 症状は速やかに改善しますので、普段健康な人は全く心配ありません。嘔吐や下痢はウイルスを身体の外に出すための症状ですから、吐き気止めや 下痢止め薬は使用しないことです。


治療と 手当


ノロ・ロタに効く西洋薬はありません。免疫力を高め症状を緩和する漢方薬が最も有効です。ただし、ウイルスの増殖力、消化管での進行状況、病 人の症状や免疫力などに対応した漢方薬が必要です。「感染性胃腸炎にはこの漢方薬」というような決まった処方はありません。

前述したように、嘔吐や下痢は、ウイルスを速やかに体外に排出する身体の反応ですから、止めてはいけません。嘔吐や下痢を止めるとウイルスは 喜んで体の中で増殖します。0ー157が流行したときに、下痢止めを飲んだ患者から多くの死者が出たことを見ても、特に下痢止めは百害あって 一利なしと考えます。

嘔吐や下痢があっても水分補給は大切です。スポーツドリンク・スープ・味噌汁など、本人が飲めるもので補給しましょう。特に、脱水になってく ると脳の活力や免疫力が低下します。脳を速やかに活性化するには「ブドウ糖」が必要ですので、スポーツドリンクなどに「ブドウ糖」(薬局や自 然食品売り場にあります)を加えると有効性が高くなります。嘔吐や下痢がひどく、脱水状態になったら救急病院で点滴治療を受けてください。

もともとノロ・ロタは太古の昔から存在し、人類とともに生きてきたウイルスです。最近電子顕微鏡により発見されただけで、大騒ぎするほどでは ありません。嘔吐・下痢症は、以前なら「寝冷えした」、「冷たいものを食べた」などの病気です。ウイルスは空気感染も多いので、ノロ・ロタの 流行期間中は、手洗い(必要ですが)などで防ぐことはできません。ただし、ノロ・ロタに感染した人と、「閉鎖空間=狭い部屋」での「濃厚接 触」は避けましょう。

以上のように、感染性胃腸炎の原因と対策を十分学習し、適切に対処しましょう。マスコミなどの風評に惑わされないことが大切です。