漢方治療では漢方薬を服用することが必然です。今まで漢方薬の服用に際し、「良薬は口に苦し」ということが、格言として当然のごとくいわれてきました。しかし、当院では漢
方薬を選ぶ時、試飲を取り入れ、その結果「良薬は口に苦し」という格言が、多くの場合で当てはまらず、反って「良薬は口に旨し」の患者さんが ほとんどです。そこで、「良薬は口に苦し」から「良薬は口に旨し」に変えることを提唱しています。
我々人類には、嗅覚・視覚・味覚・聴覚・触覚の五感があります。中でも嗅覚と味覚は最も原始的な感覚 で、生物の生存にとって重要な感覚です。漢方薬を味や匂いによって選択する試飲は、大切な方法です。漢方薬が味のみならず、匂いも重要な要素 であることは、薬物の匂いよって体調を整える、アロマテラピーなどで判ると思います。さらに、「百薬の長」といわれる酒を飲む時、その味や香 りによって酒を選び、同時に自分の健康状態をチェックしているのです。
最近テレビのコマーシャルで、某製薬会社が宣伝のため、口当たりの良いゼリーを漢方薬に混ぜ、「良薬は口に苦し」の漢方薬を、「良薬は口に旨 し」に変えるいう宣伝を行っています。しかし、この宣伝では、そもそも漢方薬は「良薬は口に苦し」ということを前提にしていますが、本来、漢 方薬は「良薬は口に旨し」ということを前提にしなければなりません。そこが全く間違っていることを強調しておきます。
以上述べてきたように、漢方薬は「良薬は口に苦し」ではなく、「良薬は口に旨し」で、「不味い薬」は効かないということをご理解下さい。
もり漢方内科クリニック 院長 盛 克己